2013年8月2日金曜日

20130802-00

新学期が始まる頃には体がすっかり怠惰モードに切り替わっており慣れた部屋の空気もベッドもわたしに絡み付いて離してくれず、つまり平たく言うとこの新学期の始業式早々、わたしは寝坊している。今日の時間割を見てみると朝一で国語の普通授業、次は4時間ぶっ通しでレクリエーション(今日は新学期で始業式で、もっと言うと新年度なのであり、クラス替え間もない生徒達を馴染ませようとする学校側のいきな計らいがコレ)、その次は二時間の合唱、その後は一時間ずつ社会と音楽、授業終了はなんと夜の8時である。時計を見ると今は昼0時10分、レクリエーションには途中参加で気まずいし合唱なんてやりたくないし、ああじゃあ夕方から登校しようかと思ったけれど今年度の新しい担任はわたしにとっては新しくなく去年と同じで、つまり怒りっぽく厳しく嫌みなカネコで、遅刻した挙げ句普通授業だけ出席するなどなんと言われるかわからない。あー面倒だけれど事前に連絡を入れておくかーと準備をしながら家を出ると雨が降っているしおまけに電車が人身事故、あっ事故のせいにしようかな遅刻を、でもそれだと寝坊して昼に起き人身に巻き込まれたのがバレバレで、ってなにをこんなに言い訳を考えるのに終始しているのかと言うとひたすら怒られるのが嫌だからだ。だってあの人ネチっこいんだもん怒り方が、「はぁ~ん? 寝坊したんですよねぇ?そんなのそこの窓から飛び降りて死ねばぁ?」とか言うんだもんたまんないよとか考えながらわたしはとりあえずホームに向かう。たらたらホームに滑り込みたらたらホームから発車した各駅停車は適度に空いており朝のラッシュとは大違い、運良く座れたわたしはめんどくさいめんどくさいと考えるばかりで肝心の学校への連絡をしていないことに気付き電話をするため隣の駅で降りる、降りてしまってから今電車の間隔が非常に長くなっていて次の電車がいつ来るかわからないことに思い当たりいったいわたしはなにをしているんだとひたすらイライラする。学校に電話をしたけど出たのは事務の男の人でさっぱり話が通じないし伝言も伝えられない有様で、このまま遅刻の連絡ができるまで電話をかけ続け電車を見送り続けたら本末転倒と判断したわたしは連絡を諦めまた電車を待つ。幸い程なくやってきた各駅は先ほどと同じくらい空いていて、でも座席の配置がおかしかった。わたしは車両のはしっこの、車窓を囲むように設置されたL字形の3人掛けのシートに座り、いつの間にか隣に立っていた名前しか知らない男の子もそこの逆端にちょこんと腰掛ける。「僕、ずっと君に会いたかったんだ」と話すその子にわたしも会いたくはあったけど今は教師への遅延連絡をなんとかメールでできないかと携帯のアドレス帳をポチポチ調べるのに忙しく、休み明けの記念すべき初・他人との会話(そしてずっと会いたかった男の子との初会話でもある)を鬱陶しく感じてしまうからおざなりな対応になってしまい、「ああ、うん」と答える自分の声が思った以上に冷たく響き覚えなくていい罪悪感がわたしを満たす。なんとか教師のメールアドレスを見つけ「せんせー、遅れます」とメールをするとすぐに「早く来い」と返信があり、取りあえず怒られることは決定したけど怒られれば遅刻は許されるだろうからオールライトということで、人心地ついたところでなにか大事なことを思い出す。
……あれ、わたし卒業論文を提出した記憶がある、たいしたものじゃないけどテーマもはっきり覚えている、友達がおらずつまらなかったから記憶がおぼろだけれど卒業式の記憶もある、それはつまりもう学校に通わなくていいと言うことで、でもただ単にわたしが自分が卒業したことをすっかり忘れていてこうしてしてもいない遅刻に怯えながらも電車に乗っているだけならわかるけどなぜ教師から「早く来い」と連絡がきたのだと頭がグルグルしたとたんわたしは病室にいた。無機質な天井と無機質なリノリウムの床――という表現をしたくなるけどそこはなんとも味のある古い天井、なにかを貼ってはがした跡や不気味なシミなどが目立つ病室はなんだか生々しく、こちらが本当の世界だとわたしは一瞬で悟ってしまった。新学期、クラスはバラバラになったものの一緒に進学したはずの級友の顔が卒業アルバムみたいに脳裏に浮かび、その一つ一つに大きな赤いばってんがつけられて、なにかのアニメの演出みたいだなと思いながらもわたし以外の級友がみんな死んでしまったことを思い出す。

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