2014年12月27日土曜日

20141227-01

しあわせなきおくで生きていけないからわたし毎日ごはんをたべる、あの子はもう夢にも出てこなくなってしまった。
なんにもならないことばかりしている、できたかさぶたをはがすようなまね。なんにもならないその行動はしかし、わたしに薄く跡として残るって知ってる。

しあわせを祈るのももう日常になって、そしてわたしの祈りと関係なくあの子はしあわせになる。かさぶたをはがし続けることはできるのに、無意味な祈りをささげ続けることができない。
いいわけをするのがうまいんじゃなくてそういうものだと認めているだけなんだけど、それはもしかしたら究極のいいわけなのかもしれないと思った。意志の力を放棄した。わたしそうなれるけど、なりたいけど、「すごくがんばる」って気がないんだ。

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51ページ読み返して泣いた、知らない人の熱に泣いた。副題読み返して泣いた、費やされた時間を思って泣いた。いろんなところでいろんなひとが、白鳥の水面下みたいに理解されないしされなくてよい苦労をしていて、そういうものを思って泣くのは多分、ほんとうは不適切なことなのだろうと思う。でもどうしたって思ってしまうし心を打つ、そしてわたしができるのは、ひっそりと水上の姿を鑑賞することだけだ。

誰かへの気持ちをその誰かに伝えることが、いちばんよいとはかぎらない。伝えられない・伝えられなくていい・伝わらなくていい・どうしたって伝わらない気持ちもあって、多分これはそういう種類のもの。ねえわたしだいすきだよほんとうに、ほんとうにだいすきなの。


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これだ、という音楽を聞けないからわたしはなんにもできない、自分のためにも誰のためにもなんにもできない。どこかにほころびがあるのかもしれない、でも繕う暇も気もないのなら、吐瀉物をなるべく然るべき場所で排泄して、なんとかやっていくしかないんだよ。




2014年12月26日金曜日

20141226-02

上空にUFOを見つけたちーちゃんが上空を見上げたたままアクセルをしこたま踏むからわたしは焦る、「ぶつかる、前見て、前!」って怒鳴るわたしを無視したままでちーちゃんは上空を睨み続ける。

山奥の温泉まで数時間、東京からちーちゃんはひとりで車を運転する。わたしの運転免許はゴールド、今ではアクセルとブレーキの位置すらあやふやで、だからちーちゃんは一人で山道を運転する。その申し訳なさはあれどもやっぱり上空を見つめたままアクセルを踏むのはよくない、よくないというか危険、運転できない人が運転手に運転に対する意見をするのはマナー違反だと思ってるけどさすがにこれは注意せざるを得ない。だからわたしは声を張り上げる、「ちーちゃん、前見て、前!!」

曲がりくねった車道にはもちろんガードレールがついているけれど断崖絶壁から車を守るにはあまりに心細く、その低いガードレールに真正面から突っ込みそうになるたびわたしは助手席から手を伸ばしハンドルを切る。薄暗くなってきた夕方、車道に浮かび上がる緑色の蛍光塗料はいろんな動物の足跡で、わたしは多摩動物公園を思い出す。ちーちゃんはUFOに、わたしは蛍光塗料の足跡に。それぞれ見とれていたら命を落とすこと必至だから、わたしは注意を前方に向け、またちーちゃんを怒鳴りつける作業に戻る。

「それどころじゃないよ、UFOだよ、いつも見ているUFOじゃなくてあんなにUFOUFOしたUFOなんてなかなか見られないよユキも早く見ていますぐ!」怒鳴るちーちゃんの目線は上空から離れない。ちらっと目線をやると視界左手稜線の向こう側にザ・UFOという形の銀色の飛行物体が明滅しながらカクカク飛んでいて、わたしも少し感心する。うわーUFO、なんてまあUFOUFOしたUFOと思うも一瞬、地球外生命体より未確認飛行物体よりいまわたしが優先するべきものは自分の命、だからハンドルを切りながらちーちゃんを怒鳴る。
もうちーちゃんは車がいくら揺れてもガードレールに車体がこすれても何の反応もしなくって、わたしはUFOが早く消えてしまうことを祈る。ちーちゃんの視界を奪わないで、思わせぶりにうろちょろしないで。わたしはあなたよりこれからちーちゃんと向かうほったらかし温泉の方が大事なんですよお願いしますどっかいって、祈り続けるけどちーちゃんは相変わらず上空を見つめていて、 わたしのハンドルさばきはどんどん雑になり、車のスピードはどんどんと上がる。

20141226-01

喉元過ぎれば熱さは忘れるし火傷をしないと気付かない、いっそのこと地獄の業火に焼かれてしまえとか大げさなことを思うけど多分全然大げさじゃない。
「しねばいいのに」とすら思われない程度のことをしたあの子は今日もよく眠りご飯を食べる、「しねばいいのに」の代わりにもらった無関心な笑顔を時々忘れて悪夢も見ずに今日も生きる。



2014年12月21日日曜日

20141221-01

砂が入ってスニーカーがわやになるから長靴を借りなければならない、潮風と砂のためにざらざらでごわごわになった髪の毛を櫛でとかしてはいけない。わたしはいますぐ列車に乗らなければいけない、白いマフラーを首に巻き鈍行電車に乗らなければならない。

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生まれたときから一度も世界に慣れたことなんてなかった、桜の木も真っ暗な星空も毎日目にしても毎日新鮮だった。美しいそれらの新鮮さはしかしわたしがそれに慣れていないという証左でもあって、つまりはわたしがこの世界に拒まれているという実感以外のなにものでもなかった。現実感なんて一度も感じたことがないからわたしはふわふわ浮いていたし、なのになぜここにいられたかというと呪いと温かい手のせいでしかなかった。

呪いがとけたらなにをしようなんて考えたことなかった、かけられた呪いをとくことしか頭になかった。呪いがかかったまま死ぬなんて考えられもしなかった、そうできたらなんて幸せだろうって何度も考えたけどできるわけがなかった。
ひたすら呪いをとくだけの毎日に日常が戻ってきた春、分不相応の夢を見てしまった。希望と期待とおこがましさはとてもよく似ていて、でもわたしはそれを取り違えるべきではなかったのだ。




20141026-00

時間が経てば鈍感になれるけど夢の中でだけ倒したはずの亡霊がゾンビみたいに蘇ってくるからわたしはもう安心して眠りにつくことができないんじゃないかと二年前思って、でもそのゾンビの襲来にもこの二年で慣れてしまった。

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誰が見てもかわいそうがって然るべき状況にある友人が、たいして親しくないもしくは全く知らない人たちに「わたしが抱きしめてあげたい」と言われまくっているのを見て、わたしは心の中で「誰もお前に抱きしめられたくなんてねえよ」と思う。見る人が見ればかわいそうがって然るべき立場にいるわたしはそれを全くの他人事として眺めることができない。かわいそうがって然るべき立場にいる人を憐れんで「抱きしめてあげたい」とのたまうのはさぞや気持ちがいいことだろうなと思う、わたしは無給でそんなことをやるつもりはないけど、「誰もお前に抱きしめられたくなんてねえよ」って反論するにも労力を使うからせめて物理的に距離を取って自己防衛するしかない。

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好きじゃなくなられるより好きじゃなくなるほうがさみしいと思う、 好きじゃなくなると全部うそになるみたいだ。だれかやなにかが変わってしまうよりも自分が変わってしまうほうがどうしようもなさがあってとりかえしのつかない気持ちになる。
わたしは自分自身のことすら上手にコントロールできないから、もしかするとどうしようもない、どうしようもなくくだらないもののせいで変わってしまうのかもしれないと思えてしまっておそろしいんだ。






2014年12月18日木曜日

20141218-01


CERO COREというゲームは、廃墟のようなゲームセンターの奥の奥にあった。
背の高さよりも高い筐体には左右に丸く青いボタンがついており、右の二つの青いボタンはAボタンとBボタン、左のボタンは右のものよりも一回り大きく、上下左右に矢印が書いてある。十字キーの役目を果たすのだろう。
古めかしい筐体とは裏腹に、表示されているキャラクターは美しく、古屋兎丸と桂正和を足して二で割ったような繊細さだった。しかしプレイヤーであるわたしからはその女の子の後ろ姿しか見えず、ひたすら十字キー(の役割を果たす、丸い青ボタン)の上を押して前へ前へと進んでゆくのだ。

美しく繊細な女の子は街中をひたすら駆け足で進む。いろんな人にぶつかり、ぶつかった相手がアクションを起こす。よろけてそのまま通り過ぎたり、殴りかかってきたり、反応は様々だ。Bボタンを押すとジャンプ、Aボタンはゲージが溜まると必殺技が使用できるらしい。
必殺技は男の子にしか使用できないから、ぶつかった通行人のふりをして襲ってくる魔法少女に対しては使用できず難儀する。ぶつかった瞬間鬼と化す魔法少女からは逃げるしかなく、わたしは頼りない丸い青ボタンの上をぐいぐいと押し込む。

そのうちゲージが溜まり、わたしはわざと男の子とぶつかる。必殺技を利用すると、その男の子と648秒話せる。仲良く会話をするその6分48秒の間に、男の子からごく自然に銀行の暗証番号を聞く。さっき必死で逃げた魔法少女から逃げ延びる直前、魔法少女にそのように指示されたから、わたしはなんとか暗証番号を聞き出す。魔法少女に殺されないよう逃げ、魔法少女の指示通り男の子をたぶらかす。CERO COREはそういうゲームだ。



2014年12月15日月曜日

じぶんメモ:11がつ本まとめ

全然読んでないし記録すらしてないし白飯炊くことすらできなかった一か月だった。死ぬかと思った。
12月は若干復活してほしい。希望。


2014年12月9日火曜日

20141209-02

田中くんは性格が悪い、らしい、美奈ちゃんもサオリも佐々木くんもそう言ってる。でもわたしは田中くんが嫌いじゃないしむしろどっちかというと好き、そう言うと皆口をそろえて「そのうちわかるよ、サイテーだよアイツ」って言う。最初は優しくおもしろい、ノートもこころよく見せてくれるし数学も教えてくれる。でもちょっと仲良くなって距離が近くなると人の悪口や愚痴がすごい、裏表もすごいし妬み嫉みもすごい、らしい。
でも別にわたしの悪口を言われていたわけではないらしいし、わたしは今のところ田中くんから悪口も愚痴も聞いたことがない、それはわたしが田中くんとまだあまり仲がよくないせいで、だったら田中くんのことを「どっちかというと好き」 でい続けるために、わたしはこれ以上田中くんと仲良くならなきゃいいだけじゃないの、と思う。美奈ちゃんもサオリも佐々木くんも実際、わたしとめちゃくちゃ仲がいいわけじゃないから、田中くん性格悪い説を聞かせられているわたしが変わらず田中くんと話していても、別に特に嫌な顔をするわけじゃないし。蝙蝠って揶揄されるほど、わたしは田中くんとも美奈ちゃんたちとも、どちらとも仲がいいわけじゃないのだ。

みんな一緒にクラスメイトになって、せーので新しい学生生活を始めたのに、教室じゃないところで勝手にそれぞれ仲良くなるから、わたしは一人取り残された気持ちになる。みんなが抜け駆けをしているような錯覚に陥るけど、それはわたしのただの被害妄想だと分かっているから顔には出さない。仲良くなって嫌いになるなら、友達未満のただのクラスメイトで、害も益もない好意を持ちつ持たれつしていた方がまし、もしこれがすっぱいぶどうだとしても。
仲良くなっていやなところがバレて田中くんみたいに嫌われる、そういうのはすごくいやだ。一度知ってしまうと知らないひとになれない、だったら最初からイメージがつかない程度の距離でいたい。いなくなっても気付かれない存在でいい、知れば知るほどみんなきっと、わたしのことすきじゃなくなるから。


20141209-01

飲んでてよっぱらって持ち帰られてベッドでいちゃいちゃしちゃって日付変わったのか変わってないのか今何時なのかわかんないまんままどろんでるときに「つきあおっか」「うん」って会話をしたり、付き合ってるような付き合ってないような微妙な状態ももう数か月だしそろそろちゃんと聞いとくかと思って「うちらって付き合ってるの?」「うん」って会話をしたり、のパターンだとおつきあい記念日とかないから(無理矢理日にちを決めるカップルもたくさんいるだろうけど)、毎月記念日をお祝いしてる人はなんか健全なカップルぽくてよいなと思った。おひるまデートして、「付き合って下さい!」「ハイ!」って会話をしていそう。健全。

ってツイッターで書こうと思ったら長すぎてだけど縮められなかったのでブログに書きました。特に他意はないただの日記です。おわり。



2014年12月7日日曜日

20141207-01

わたしはすぐ笑う、だからよく「しあわせなやつだな」と言われる。アイスがおいしくて、猫が可愛くて、雨が上がって雪が降って、わたしは毎日しあわせで笑う。
お父さんに殴られたり先輩にしめられたり先生に触られたりとかたとえばそんな話、思い出しても人に話してもなにも楽しくないから思い出さないし話さない、ただそれだけのこと、しあわせなことしか考えたくない。
娘を殴る父親と冬季限定のおいしいアイス、どちらが人生において価値があり重んじるべき存在かというと絶対後者、わたし絶対後者しか見ない、しあわせなんてピントをどこに合わせるか、ただそれだけの問題だ。




2014年12月2日火曜日

20141202-01

猫を養子に迎え入れるにあたり戸籍に乗せる本名を定めるための家族会議が始まった。まずは名字から、口火を切って母が「四月、でいいんじゃない」と言う。
「四月? なぜ」
「だってもともとはあんたたちカップルの猫じゃない、圭介君の名字をとって、四月」
母よその圭介君と別れて傷心のわたしにいったい何を言い出すの、おまけに圭介君の名字は四月(しがつ)ではなく四月一日(わたぬき)だ。
「アラ、しがつ・ついたち君かと思ってたわ」っておいおい数秒前に圭介君ってバッチリ言ってたでしょう、圭介君の本名がしがつ・ついたちけいすけ君略してけいすけ君だと思ってたのかと突っ込む時間も惜しいのでわたしは母を無視することにする。何が悲しくて別れた元彼の名字を養子にする猫につけなければならないのか。そんなこと、フッた元カノがしていたら怖すぎる。
妹は妹で命名:四月に賛成だったらしく下唇をつきだして不満げな顔をしている。わたしに似てぜんぜん可愛くない妹にはそういう仕草は全く似合わない。わたしの家族はみんな駄目だ、もうわたしが独断しなければと思った矢先存在感皆無だった父親が口を開く。
「養子になるのだから、うちの名字でいいんじゃないのか?」
一同ハッとするあたりが馬鹿だが今わたしも全く同じことを言おうとしていた、どうせ下らないことしか言わないのだから大声を出して父親の意見を遮ってしまおうとしていたことを心の中でそっと詫びる。
名字が無事決まったところで疲れてしまった私たちは寿司をとることにした。名字を決めるだけでこれだけ疲れてしまうのだから名前を決めるのはどれだけ大変なことだろう、考えるだけでぞっとするけどいいさ可愛い養子の猫のためだから、おかあさん頑張るよと心の中だけで呟きわたしは鮪の握りに手を伸ばす。寿司を食べるわたしたちを猫が恨めしそうに見ているけれど安い出前の鮪の握りより、君の食べているお魚フィレに蟹のほぐし身と小海老添え(魚介の煮込みスープ)のほうがよっぽどおいしそうだよ。

2014年12月1日月曜日

20141201-01

駅から目的地まで歩いて30分、その間に美容室を13軒見かけた。どの店も適度に混んでおり、今この瞬間、この国で、一体何人が髪の毛を切られているのだろうと考える。
コインランドリーは1軒しか見かけず、その1軒のコインランドリーに4台ある乾燥機はうち1台しか動いていなかった。つまり今この町では、コインランドリーで洗濯をされている洋服の数より美容室で髪を切られている人間の方が多いのだ。