2014年12月2日火曜日

20141202-01

猫を養子に迎え入れるにあたり戸籍に乗せる本名を定めるための家族会議が始まった。まずは名字から、口火を切って母が「四月、でいいんじゃない」と言う。
「四月? なぜ」
「だってもともとはあんたたちカップルの猫じゃない、圭介君の名字をとって、四月」
母よその圭介君と別れて傷心のわたしにいったい何を言い出すの、おまけに圭介君の名字は四月(しがつ)ではなく四月一日(わたぬき)だ。
「アラ、しがつ・ついたち君かと思ってたわ」っておいおい数秒前に圭介君ってバッチリ言ってたでしょう、圭介君の本名がしがつ・ついたちけいすけ君略してけいすけ君だと思ってたのかと突っ込む時間も惜しいのでわたしは母を無視することにする。何が悲しくて別れた元彼の名字を養子にする猫につけなければならないのか。そんなこと、フッた元カノがしていたら怖すぎる。
妹は妹で命名:四月に賛成だったらしく下唇をつきだして不満げな顔をしている。わたしに似てぜんぜん可愛くない妹にはそういう仕草は全く似合わない。わたしの家族はみんな駄目だ、もうわたしが独断しなければと思った矢先存在感皆無だった父親が口を開く。
「養子になるのだから、うちの名字でいいんじゃないのか?」
一同ハッとするあたりが馬鹿だが今わたしも全く同じことを言おうとしていた、どうせ下らないことしか言わないのだから大声を出して父親の意見を遮ってしまおうとしていたことを心の中でそっと詫びる。
名字が無事決まったところで疲れてしまった私たちは寿司をとることにした。名字を決めるだけでこれだけ疲れてしまうのだから名前を決めるのはどれだけ大変なことだろう、考えるだけでぞっとするけどいいさ可愛い養子の猫のためだから、おかあさん頑張るよと心の中だけで呟きわたしは鮪の握りに手を伸ばす。寿司を食べるわたしたちを猫が恨めしそうに見ているけれど安い出前の鮪の握りより、君の食べているお魚フィレに蟹のほぐし身と小海老添え(魚介の煮込みスープ)のほうがよっぽどおいしそうだよ。

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