2014年12月26日金曜日

20141226-02

上空にUFOを見つけたちーちゃんが上空を見上げたたままアクセルをしこたま踏むからわたしは焦る、「ぶつかる、前見て、前!」って怒鳴るわたしを無視したままでちーちゃんは上空を睨み続ける。

山奥の温泉まで数時間、東京からちーちゃんはひとりで車を運転する。わたしの運転免許はゴールド、今ではアクセルとブレーキの位置すらあやふやで、だからちーちゃんは一人で山道を運転する。その申し訳なさはあれどもやっぱり上空を見つめたままアクセルを踏むのはよくない、よくないというか危険、運転できない人が運転手に運転に対する意見をするのはマナー違反だと思ってるけどさすがにこれは注意せざるを得ない。だからわたしは声を張り上げる、「ちーちゃん、前見て、前!!」

曲がりくねった車道にはもちろんガードレールがついているけれど断崖絶壁から車を守るにはあまりに心細く、その低いガードレールに真正面から突っ込みそうになるたびわたしは助手席から手を伸ばしハンドルを切る。薄暗くなってきた夕方、車道に浮かび上がる緑色の蛍光塗料はいろんな動物の足跡で、わたしは多摩動物公園を思い出す。ちーちゃんはUFOに、わたしは蛍光塗料の足跡に。それぞれ見とれていたら命を落とすこと必至だから、わたしは注意を前方に向け、またちーちゃんを怒鳴りつける作業に戻る。

「それどころじゃないよ、UFOだよ、いつも見ているUFOじゃなくてあんなにUFOUFOしたUFOなんてなかなか見られないよユキも早く見ていますぐ!」怒鳴るちーちゃんの目線は上空から離れない。ちらっと目線をやると視界左手稜線の向こう側にザ・UFOという形の銀色の飛行物体が明滅しながらカクカク飛んでいて、わたしも少し感心する。うわーUFO、なんてまあUFOUFOしたUFOと思うも一瞬、地球外生命体より未確認飛行物体よりいまわたしが優先するべきものは自分の命、だからハンドルを切りながらちーちゃんを怒鳴る。
もうちーちゃんは車がいくら揺れてもガードレールに車体がこすれても何の反応もしなくって、わたしはUFOが早く消えてしまうことを祈る。ちーちゃんの視界を奪わないで、思わせぶりにうろちょろしないで。わたしはあなたよりこれからちーちゃんと向かうほったらかし温泉の方が大事なんですよお願いしますどっかいって、祈り続けるけどちーちゃんは相変わらず上空を見つめていて、 わたしのハンドルさばきはどんどん雑になり、車のスピードはどんどんと上がる。

0 件のコメント:

コメントを投稿