2014年10月12日日曜日

20141012-01

「バイクのうしろは寒いから」って言われた徒歩だって寒い夜、モコモコに着込んだわたしを見てあの子は笑った。「寒いったって限度があるでしょ」って言うあの子に「あんたが寒い寒いって脅すから」って言い返したら頭をコツンと叩かれた。着込み過ぎでモコモコで雪だるまみたい、コロコロ転がっていきそうだからちゃんとつかまっててねって言われて回したわたしの両腕はなんとかあの子のおなかでつなげる程度、あの子だってわたしに負けず劣らず厚着をしていた。
どんなに顔をあの子の背中にくっつけてもそこには冷たいコートしかない、どれだけ両腕をぎゅっとしても腕の中にはコートしかないみたい、コートをはいでマフラーを取って、洋服を一枚一枚丁寧に脱がせたら、本当にあの子がそこに残るのか不安になるような細い芯。

海みたいに幅広い川の向こうはもう違う県、びっくりするほど大きな橋をビュンビュン飛ばすのは大きなトラックばかりで、抜かされるたびに風にあおられてこわかった。「この橋を渡ったらどこにいくの?」っていうわたしの質問は風の音でかき消されてあの子の耳まで届かなかった、だからわたしはあのときわたしたちが、どこに向かっているかわからなかったんだ。


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