2014年1月25日土曜日

20140124-01

宮城といえば仙台、仙台といえば青葉城って思ってたけど仙台駅からたった3駅離れたところにお城があるなんて知らなかったし、仙台にモノレールが通っているのも知らなかった。

地上を、頼りない鉄のラインを辿るように走るモノレールからはこれから進む道のりのカーブや目指す建物が見晴らしよく眺められて壮観だった。目の前に、空まで続くのではないかと思われるくらい高い城壁と中央階段が見えた。お城を訪れたことがわたしはあまりないけれど、どこのお城も急な階段の上に立っているのかな、と思った。
石垣はあまり劣化しておらず、うず高く積まれた石と石との間には隙間がほとんどなくて、どこに手をかけていいかわからなかった。まっすぐ垂直に立っているのではなくて、若干のカーブを描いてそそり立つそれの、何とか見つけた隙間に手を入れ足をかける。モノレールからは階段が見えたはずなんだけどそんなもの到着して見るとどこにもなくて、観光客や参拝客はみんな、こうして石垣をよじ登って城を訪ねる。
正面から向かって右側、比較的人が少ない場所を選んで登り始めたはいいものの、楽に上れたのは100メートルくらい、いや100メートルも登れたら十分なんだけど、頂上まではあと3メートルあって、それがどうしても登れそうにない。比較的見つけやすかった手や足をかけるための隙間は登れば登るほど見つからなくなり、石垣の下の部分よりもさらに、石と石はほんの少しの隙間もなくぴっちりと積み上げられている。
顔を左に向けると、手足を必死で石垣にしがみつかせているわたしとは対照的に、背筋を伸ばし、地上を歩くかのようにほんの1ミリほどの石の凹凸に足をかけスッ、スッと軽々石垣を登って行く人たちが見えた。もしかしたらわたしはいまとても腰が引けていて、だから変な体制になって石垣にしがみついてしまっているけど、落ちるとか落ちないとかバランスとか全く考えないで、ああやって当然のような顔をして登って行けばいいのかなって思ったりしたけどふと下を見ると地面があまりにも遠く、そんなことできそうもなかった。
次に手をかける場所を探して視線を彷徨わせ、どうして右側がこんなに人気がないか気付く。左より右のほうが石がピッチリ積み上げられていて登りづらいのだ。
だからわたしは一旦上に進むのをあきらめ、左に平行移動を始める。思った通り、石垣の左のほうが隙間が多く、進みやすそうだ。
左側を集団で登ってきていた、地元の野球少年たちを交わしながら左に陣地を取る。1メートル進めたがあと2メートル、ここまで来るといくら左側の石垣でも隙間がなくなってきていて進めない。どうしよう、いっそのこともう諦めてしまおうか、でも諦めるといったってせっかくここまで来たのにもったいないし、何よりここからどうやって降りるのだ……。段々と痺れてくる手足を意識しないように今後どうするかぼおっと考える。頑張って後ろを振り向くと広がる仙台港が見えて、これを頂上から見れたらなんて幸せなんだろう、と思った。

と、右側から、2歳くらいの幼児がわたしの顔に乗ってきた。
子供を背負ってこの石垣を登っている人もいるんだとは思っていたが、その父親はわたしと同じくあと2メートルのこの地点でこれ以上上に登ることを諦めたらしく、せめて子供だけでも登頂させようと子供をわたしの顔(頭)に乗せてきた。
子供はわたしを足場にして上へあがろうともがく。濃いピンク色の、つなぎのスキーウェアのようなものを着た子供は丸くて温かく、しかし確実に重量があって、ただでさえ落ちそうなわたしは両手の指に力を入れ何とか落ちないように踏ん張るのだけれど、踏ん張る足場がないからひどくつらい。
なんとか子供をやり過ごしふと上を見ると、石と石の間に比較的大きな隙間があった。あそこに手をかけたら一息に登ってしまえるのではと思い、わたしは思い切って手を伸ばす。右手をがしっと隙間に入れる、左手も同じくらいの高さの隙間に入れる。オーケー、わたしの両手はがっしり石垣を掴めている。しかしそうすると両足をかける場所がなくなってしまって、わたしは両手だけで石垣につかまる形になった。もうここまで来たら仕方ない、手の力だけで頂上まで上がろうと決意したその瞬間、右手の隙間、石の表面がボロっと崩れた。
石垣が垂直じゃなく、ゆるいカーブを描いてそそり立っていることに感謝しつつ、ああこれは、うつぶせで滑り台を落ちるみたいな感じだから案外怖くないな、かなりの時間をかけて登ったのに下るのは一瞬だなって思いながら、わたしは一気に下まで落ちた。

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