2012年6月10日日曜日

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ずっときみのことが好きだった。



「ずっときみのことが好きだった、 穢れた妄想で君を汚すこともなく、君の衣服を脱がせ蹂躙したいと思ったこともない、ただただ君が幸せになってくれればいいと思っていた、僕のいのちさえ惜しくなかった。こうやって一人で君への恋慕を募らせ育て、こんな高尚な気持ちを持っているのは僕ひとりだと思っていたし、今でも思っている。僕の君への愛情は、尊く、美しく、純潔だ。誰にも汚されることはないし、この世で一番強く、純粋だ。君は彼を好きだという、でも君の体を陵辱し汚す人間の愛情のどこが純潔か。肉体的接触がなくとも君をただただ好きでいる、この思いこそが唯一正しい愛情で、それ以外は全て、まやかしの、屑だ。」


君はさ、そんな妄想を抱いていたかもしれないね。でもさ考えてみて、粘膜と粘膜をこすり合わせる作業、一番敏感で弱いトコロを使う行為、それは時には陳腐なものだが心を込めてやればそれに勝る愛の確認方法などないのだよ。朝起きてごはんを食べて活動をして眠る、そういう「生活」と呼ばれる地味なものを共に行うことに、どれだけの価値があるか想像したことはある?君の言う、陳腐な行動で着床し子を成しそれを育てる、生活の下らない些細な行動を共にする、文章化すれば数文字で完了してしまうこれらの行動が、どれだけ重いか君は知っている? 知らないだろう、君が一人で紡いだ僕への「愛」は、君が一人で紡いだものなのだよわかるかな、つまりそれは、君一人のものなんだ。僕が、僕と彼が一緒に紡いでいた「愛」は、僕と彼と、こどもたちのものだ。君のそれと僕らのこれ、どちらが重いかわかるかい?自明じゃないかわかるだろうわからないふりができないほどに分かるだろ?僕らのこれは間違いなく、「愛」と呼ばれるものだよね、君のそれはね、「ひとりよがり」だよ。





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夜景が見たくなった、唐突に。僕が思い浮かべる夜景は豊田か、多摩川か、どこかの海だ。
夜景というとロマンチックなかんじがするけど全然そんなんじゃない、僕の知らないところで知らない人が生活している、それを考えるだけで胸が痛くなる。小学校のときからそうで、大人になった今も、それは全然変わらない。多摩川で、神奈川と東京の県境を眺めて歩きたいなって思って、久々に、イギーポップファンクラブの気持ちになった。
わたしにだって好きな人がいる。でもわたしが好きな人って、わたしが頭の中で再構築したそのひとなんだよ。だから現実のその人が、質量のあるその手でわたしに触れた瞬間に、なにかが崩壊するんだよ。そういうのを望んでるんじゃないのになって悲しくなって、でもああ、わたしが悪いんだなって、どうしようもない気持ちになるんだよ。触れた手の暖かさや重み、それらはとても優しいけれど、その中のなにか、「物質に触れる」以上の感覚を感じ取った瞬間、なんだかやるせない気持ちになるんだ。そうしたらねああ、わたしはたとえ幸せになれないことが分かっていても、一人で捏ね繰り回した「ひとりよがり」を、愛だの恋だのと奉って、ありがたがっていたほうがいいなって、そんな悲しいことを思ったりしてしまうんだよ。




今日はスパークリングワインを買ってしまったので夜更かしします。矢飼先生みたいなひとにうでまくらをしてもらえるなら、もしくはみすずちゃんのようなひとをうでまくらできるなら、ストンと眠りに落ちれるのにね。





 

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