2015年11月5日木曜日

20151105-01

触るというのは暴力で、おとうさんの指先からは超音波が出ている。わたしはもう大人だから世界が広いことを知っている、海の向こうにも街があることや、この家から出たって生きていけること。



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わたしのすきなものをすきなひとがすきだとは限らないし、わたしのすきなひとのすきなものを全部すきになれるかというとそうでもないから途方に暮れるしおもしろいんだと思う、本当はわたし、あの夜、眠らないで朝まで一人で映画を見ていました。
夏の朝は早い、夜だった瞬間が一瞬しかない、だから最後まで見終わったのは朝日がもう顔を出し切ってしまった頃で、それでも外に出ると早朝のさわやかな感じがしました。おんなじものを見ると少しは理解できる気がしました、でもわたし映画じゃなくて君のことばかり考えてて、だからお話もちゃんとは頭に入らなくて、だから今でもわたしは、どうしたら君に好かれるかわからない。



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手に取るようにわかるのにどうしようもないことがあるってお姉ちゃんが言ってました、意味がわからなかったけれど今ならわかります。例えば交差する高速道路、ぐるぐるまわるジャンクションみたいな、そんな感じだったんだと思います。もう一生しないことがたくさんあるんだと思いました、夜の高速道路を走ることも、外人墓地で朝を迎えることも、しらない幹線道路脇のファミレスでまずいコーヒーを飲むことも。もしかしたらなにもかも、本当はわたししたことがないのかもしれません。





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目の前のものが全てだったから、例えば家に帰ればあたたかい食事とあたたかい両親が迎えてくれるのは知っていて、それでも目の前のものが全てだったから、あのときわたしには君しかなかった。わたしが絶対守ってあげるって君の頭を撫でたその手でわたしは今おかあさんの作ったシチューを食べている、一通り泣いて泣きつかれた君がおとなしくまた家に帰ったことを知っている、家に帰ってから何があったかは知らないし、もう知ることはできない。

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