2013年2月17日日曜日

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ゾンビの子供は卵大で、いやむしろまさに卵だった。ころんとした真っ白でザラザラした球体には二つの大きな目が、まっくろくろすけやスライムみたいな可愛らしい目がついていて、それは愛らしいを2周くらい通り越して薄気味が悪い。彼らは5体真横に並び前線を狭めるように攻めてくる、わたしはフライ返しでそれを上からぽこんと叩く。叩かれたそれらは卵のようには割れないし血だって出ないのだけれど代わりに瞬時に真っ赤になって、しかし歩みは止まらない。第一形態が白で第二が赤、変形はせず色だけ変わったけどじゃあ第三はどうかというと空恐ろしいものに変質しそうでわたしはそれらを叩けない。


セーブをするには特定のポイントを通過する必要がある、この世界はゾンビの世界だから町や村ですら安心してくつろげるところではないしつまりは24時間気が休まらない。本当ならばセーブポイントかつ回復の拠点である町や村までもが敵に侵されているなんてRPGとしての難易度が高すぎる、エンカウントに次ぐエンカウントでわたしの画面は真っ赤になった。実家から送られてきたプレイステーションはラジカセみたいな形でクリーム色、これどこが壊れているの?と母に電話で聞くと「ビデオが取り出せなくなったの」と言う。まずCDの収納部分を見てみるとCDが重ねて2枚入っていて、一つは何かのゲーム、もう一はメタリカのCDで、わたしはメタリカのほうを取り出す。肝心のビデオ部分のイジェクトボタンを押してみるとビデオの頭が2mmほど飛び出てきたのでわたしはそれを爪を使って慎重に引き抜く、確かに2mmという長さはビデオを引き抜くとっかかりとしては短過ぎる、でも引き抜けないこともないのでこれは故障ではなく仕様だと結論付け母にそう伝えたが電話越しに聞く溜め息で彼女がそれに納得いっていないことが手に取るようにわかる。受話器越しの溜め息は質量を持ってこちらに漏れ伝わりわたしの右手を重くする、でもそんなこと言ったってさ人は、近代的便利さや洗練されたスタイリッシュさの為にある程度の犠牲は誰しも払っているんだよとわたしは心の中でだけ言う。便利な機械は手間を省くためにありそれを使用するには操作が必要、ワンタッチのそれだってワンタッチが必要でそれさえ疎むくらいなら思い描いただけで実行されなければならないがつまり心を読まれるということでわたしはそれは気持ちが悪い。

家電量販店は賑やかで、一時期増えたボタンが少なくつるんとしたデザインのシンプルな家電は昔のものになっており指先で慎重に選ばなければ複数個押してしまいそうな小さなボタンがどの機械の前面にも所狭しと並んでおり店員はそのボタンの多さとそれに比例した機能の多さをアピールしてきてわたしは苦笑いしかできない。

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