2013年2月10日日曜日

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手のひらに乗るくらいの小さな箱、100均で売ってそうなそれに入っていたのはたくさんの名刺と、数十個の2×1×10センチくらいの透明なプラスチックに入った写真。
そんな箱が4つ、バーカウンターやわたしが今左手を置いているサイドテーブル、ソファーの前のローテーブルにぽつりぽつりと置いてある。
ソファーにどかりと腰を沈め偉そうに座る女の子に「これ、何?」と訊くと彼女はつまらなそうに「ああ、あれだよ、わたしのセフレ、1軍から4軍まで」と答えた。胸まで伸ばした髪の毛はきれいに巻かれた栗色で、前髪を斜めに流した彼女は大人びて見えるけど19だ。
わたしは「ああ、あの、例の」と独り合点して、1軍の入った箱を探す。

「ねえそれはさ、寂しいとき誰でも良いからセックスしたいの、それともみんな好きなの?」と純粋に質問すると彼女は呆れた顔でわたしを見返した。その顔には『そんなこともわからないの?』って書いてあったから、わたしは『19のくせに、』と思う。
「みんな好きとかじゃないし寂しくもないよ、4軍の子なんてどうでもいいよ」と彼女が言うからわたしは4軍の名刺を束ねて一気に破り捨てる。
小さな紙は束ねると破りづらく、まるで「どうでもいい4軍」達に抵抗されているような気持ちになる。

「わたし、あなたにどうでもいいような人とセックスしてほしくないな」と言いながら、わたしは1軍の箱を探す。4軍にはそれなりに社会的地位が高そうな人たちがたくさんいて、そうしてわたしは彼女がセフレと呼ぶ男の子達が彼女のことを本当に好きなことを知っていて、じゃあ果たして彼女の1軍には、一体どんな人たちがいるのだろうと興味を覚える。
1軍の箱がどうしても見つからず、名刺と、変な写真プレートの入った箱を見つける、「あっそれ2軍だよ」と彼女が嬉しそうに言う。
この写真は?と訊くと、「それ、中学の頃の好きだったXX君」と嬉しそうに答える。
体育祭や修学旅行や終業式のクラスの集合写真から、黒髪でおさげの眼鏡をかけた彼女をわたしは見つける。4月の写真の彼女のスカートはバカみたいに長かったのに、3月の彼女はミニにしている。

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