2013年11月18日月曜日

20131118-01

こちらの世界の人は相手を殺さずに和解をするらしい、基地に帰ってきた先生のグループに見慣れない人がいたから間違って頭を撃ってしまって、でも咎められなかったからホッとした。
ていうか敵じゃないのに見慣れないってだけで殺しちゃってごめんね先生って思ったけれど(でもフード付きパーカーのフードを被った色黒の大男なんて、反射的に撃ってしまっても仕方ないと思う)、先生は足下に転がる4人の死体を無視して「久しぶり、無事で何よりだよ」ってわたしに笑いかけたから、わたしも笑顔で久しぶりって返した。
先生が言うには、注射するタイプの薬をわたしのお兄ちゃんが開発したから敵になっても殺さないでいいらしい。そういう先生の手には確かに何かが握られていたけれどどう見てもそれは杭にしか見えなくて、っていうか絶対杭、杭以外の何物でもなくて、でもそれを指摘するとめんどくさそうだったから、わたしは納得したふりをした。最後尾を守ってたお兄ちゃんがわたしに気付いて嬉しそうに手を振り、注射器(どう見ても杭)をわたしに渡してくれた。さっきの先生の説明通り、先日襲われて敵になってしまったはずのおばさん達が正気になって先生の後をついてきてた。こちらがわの絶対数アップは確かに心強いなと思ったけれど、向かってくる敵を殺さず一々薬を打つのは少し面倒だなとわたしは思った。
その注射器(ていうか杭)は木でできていて、わたしの両手の人差し指と親指でわっかを作ったくらいの太さで、一方が荒く削られていて尖っていて、尖っているけれどそれだけの太さだから刺さるわけもなく、だから木槌で尖ってないほうをコーンと打って、敵の足の裏に刺すってことだった。どう見たって杭だけれど注射器であるこれは、中にお兄ちゃんが開発した薬が仕込んであって、それが足の裏から全身に回り、ゾンビになっちゃった人たちを再び生者に戻すらしい。いたちごっこになりそうだけれど、こちらの数が相手を上回った瞬間に一気にかたをつけることができたら、確かにこの島から、敵を一匹残らず駆除(オセロの、黒を全部、白にひっくりかえすみたいに)できるのかもしれない。みんなを助けたいっていう甘ったるい理想をお兄ちゃんは叶えるために確かにこうして効果的すぎる方法を開発したわけだけれど、悪即斬とばかりに敵を見たら頭を撃てって教え込まれたわたしにとっては、みんなを救うために膨大な時間と労力をかけるよりも、とりあえず自分だけ生き残るために自分以外を殺しちゃうほうが、よっぽど簡単だし効果的に思えた。

0 件のコメント:

コメントを投稿